PDI製インナーバレルの精度について


■選択肢の多くなった「インナーバレル」の現在地■

PDIを代表する製品であるインナーバレル。2021年現在、多くの内径別バレルをリリースしております。直近では、これまでのバレルの概念を崩した「内径5.99mm」という究極のバレルにチャレンジし、試作・検証を行いました。他社様含め、インナーバレルの材質は多種に及びます。純正機種に多く導入されている真鍮製、アルミ製、弊社含むカスタムバレルで存在するステンレス製、スチール製(多種コーティング有り)、それぞれの良さがあり、過去に比べ形状や内径も選択肢が格段に増加しました。そんな中、PDIがステンレスバレルにこだわるのは何故なのか?

■信頼性高く長く使えるものを■

インナーバレルは発射機構の要であるセンターラインを構成するパーツです。チャンバーやパッキンと同じく発射精度に大きく関わり、弾が発射される中で最後に通過する部分です。内部からも外部からも影響を受ける部品ですから、あらゆることを考慮した結果ステンレス(SUS304)が選択されました。

● 耐食性 ● 耐久性 ● メンテナンス性 ● 内径精度の維持 ● 加工技術の証明

ご使用者様にはできる限りストレスフリーで使って頂くための選択です。真鍮や鋼鉄製バレルではコーティングを行うとは言え耐食性の問題が付きまといます。
真鍮や鋼鉄を選択する理由としては加工性の良さやコスト面でメリットがあったりしますが、加盟団体による使用可能素材のルール化などの背景もあるようです。
PDIで使用するステンレス(SUS304)は国内工場での冷間引抜加工によるシームレスパイプです。材料の時点で±0.002mmという厳しい内径公差をクリアしています。PDIバレルの要です。さらに、CNC旋盤による精密加工と職人による最終仕上げ、厳しい検品を通過した物が最終製品として出荷されます。

■PDIステンレスバレルの実際の精度は?高価なのは何故?■

さて、ここで皆様が気になるのは「実際のPDIバレルの精度がどの程度の物なのか?」「なぜ他社と比べ高価な設定なのか?」という点と推測されます。
まず、実際の精度として分かりやすく数値化されているものを公開しますと、


●内径精度
加工後インナーバレル内径精度測定テスト

PDIは商品アピールとして、「公差±0.002mm」を謳っております。その内径精度の目安として加工後のバレルを画像寸法測定器にて計測致しました。その結果、研磨処理後においても6.012mm(+0.002mm)を維持できているポイントが確認されました。先端部(端面より約10mmの箇所)においてはCNCによる加工が入る箇所になりますので中間部より強めの研磨がなされていますので、6.014mm(+0.004mm)という結果がでております。


内径の面粗度(表面粗さ)
加工前・加工後インナーバレル内径面粗度

また、内面の粗さについても計測し数値化致しました。

一般的に「算術平均粗さ(Ra)」が面粗さの評価に利用されます。
算術平均粗さ(Ra)は粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値。一つの傷が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果が得られます。

この面粗さについても研磨時のRa値が素管(未加工)時の半分程度の数値となっており、グレードでいうと▽▽▽▽の鏡面研磨仕上クラスの精度が出ていることが確認できました。


●何故高価なのか?

精度面では上記のような一定評価が出ておりますが、価格が他社バレルに比べ何故高くなるのかという点としまして、以下のような要因があります。

● 素材自体が高価である ● 難削材であるため加工時間がかかる ● 仕上げ作業、検品に多くの時間をかけている



まず、素材については先述したように超高精度を誇る公差指定があるため必然的にコストが上がります。PDIの材料経費の多くはこのステンレスバレルに割かれています。次に、SUS304は切削性がアルミなどに比べ良くないため、刃物への負担が大きかったり、きれいに削るのに時間が掛かります。切削時間の長さはコストに大きく関わるため、価格に反映されます。最後に、他社様との最大の違いである仕上げ作業と検品作業に多大な時間を割いていることが挙げられます。

材料、機械的な精度については、同じ材料を購入し同様の機械を使用することで他社様でも再現が可能です。PDIが最も力を入れているのは最終工程のバリ取り、研磨仕上げ等の職人技の部分です。この部分に関してはPDIの年々進化する独自ノウハウが大部分を占め、他社様とは異なる点です。ノウハウは仕上げ部門で共有され極力均一化されるようにシステム化されており、数多くの受注においても品質を維持して出荷することが可能です。内径の検品においても最終出荷までにバリや弾通過のチェックが複数回入る形となりますので、それらに割く時間は必然的に多くなります。

全てはご使用いただく方に安心・安全に長く使って頂くために全力を尽くして生産している結果、現体制に行き着きました。ご理解をお願いするとともに、これからも弊社製品をご愛用頂けますと幸いです。